『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』 | 上遠野浩平 | 電撃文庫 |
そういえば続き物で謎の巨大組織もいるんだっけなあ、と思い出した。なんか、世界 の危機って言葉が、これほど宙に浮くヒーローものも珍しいだろう。世界の危機で現 れるはずのブギーポップが解決するのは、いつも、誰かの心の病だからね。もちろん 本業(?)にも余念がないけどそんなの重要じゃないでしょう。所詮、世界が継続し てたって、私が壊れてしまえば意味はない、というおれら世代の本。(03/01) |
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「君の、その気持ちが黄金でないとするのなら、この世の中に輝けるものなんか何にもないんじゃないかな?」 |
『ドラキュラ戦記』 | キム・ニューマン | 創元推理文庫 |
私はビクトリア調は大好きだけど20年くだって第一次世界大戦まで時代が来てしま うともうダメ。なかなか入り込めませんでした。骨の髄まで平和教育が染みついてい るので軍服嫌いだしね。でも戦争賛歌ではありません。それよりも、吸血鬼まで殺し てしまう近代兵器合戦の愚かしさが虚しく実感できるでしょう。別にトップは吸血鬼 じゃなかったのに、同じことをやったのですよ、私たちは。(03/05) |
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「また新しい本を書けばいい。こんどは真実を伝える、正直な本をね」 「真実にはあまり興味をひかれないのですよ」 |
『特命リサーチ200X 超常現象編』 | 日本テレビ | 日本テレビ |
実際にあったらぜひ就職したいです、F.E.R.C.。謎と言われることに対して、科学的 検証を試みる。絶対一度は理論で説明をつけてやる、といわんばかりの姿勢が好き。 あやしさでは、実はムー的解釈とどっこいのこともあるが、そんなことはたいした問 題じゃあない。ミステリと同じ、過程が面白いんだ! 人体自然発火の謎がいちばん 興味ひいたかな、いちばん知らなかったから。(03/06) |
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謎が解明できない事故例があるのも事実である。 |
『世界人名ものがたり』 | 梅田修 | 講談社現代新書 |
日本人は滅多に先人から名前をもらってつけるということをしないし、しかもそれが 宗教的偉人であることはほとんどないので、何故にこんなにも古代の名前を引き継い でいるのかの精神・文化構造の方が疑問だ。個人主義代名詞米国人も名付け文化はな ぜか踏襲なのだな。しかし、ロリータがマリア由来だって、風が吹けば桶屋が儲かる 的なまわりくどいこと、現代人も考えているのか?(03/08) |
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ヨーロッパ人の名前の大半は、千年にもおよぶ歴史を生き残ってきたものです。 |
『翼ある闇』 | 麻耶雄嵩 | 講談社ノベルス |
メルカトル鮎についての知識が先走っている私は、初めて読んだこれに大ショック。 なんて軽い扱い……! それはともかく、数ある雨後の筍の中では、性に合ってる方 かな。「そんなんありかー!」と落としておいて、本当の最後の推理に信憑性を持た せる手法も許容範囲。意味ありげなタームはいかにも鮎を作った人種の遊びっぽい。 ところでこのオチだと痙攣や左手の鍵の謎が……(03/10) |
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「白い鴉はもう鴉ではありません」 |
『トリガー 凶星の歌』 | 霞田志郎 | 小学館 |
太田忠司別名義の本。この人の本は読むたびに「古臭い」と思うのだけど、今回は特 に、確信犯かもしれない。それにしたって、キャラクターがもう一歩のカリスマを備 ていればのめりこめるのになあ、と思うにつけ残念。験がどうしてアレでなくてはい けないのか、好きであるが故に首を傾げたが、よく考えると眷属にアレがいるから? もっと『雪女のキス』の正体暴きに衝撃があってもいいのにな。(03/11) |
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この本は宝石だ。人間が自分の手で作り上げた最も美しいもののひとつだ。 |
『<意識>とは何だろうか』 | 下條信輔 | 講談社現代新書 |
脳と人間の身体性や環境の結びつきを重要視するのは最近よく読むので、学術的流れ なのだろうと思うし、私も同意できるが、突き詰めると人間は機械仕掛けどころか、 空っぽのインターフェイスに思えてくる。それを筆者は無意識の領域としているけど 意識に拡張できない理由はイマイチ弱いかも。錯誤を正常動作とする論理は例が豊富 で面白い。用語は平易だが論文的。あと、サイボーグは人間だぞ!(03/12) |
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(人はロボットに簡単に)「生命」と「意図」を「読みとって」しまいます。 |
『Xの悲劇』 | エラリイ・クイーン | ハヤカワ文庫HM |
読んだことがあるはずだけどまったく覚えていなかった。イメージよりも現代的だ。 あのときチェリーさんや奥さんはどんな意図であんな行動をとったのかとか、行方の わからぬ娘はどこに行ってしまったのとか大きな疑問が残る。ちまちました弁護の方 が説得力がある。しかしやはりワトスン役がいないのは、どうにも物足りなくてたま りません。とりあえずレーンは是非ショーン・コネリーに!(03/14) |
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「そこに軽く触れられるだけで、容易に人殺しに変わってしまうのです」 |
『造物主の掟』 | ジェイムズ・P・ホーガン | 創元SF文庫 |
こりゃ楽しいわ。心霊術師がそのペテンのトリックで高度に進化した異星のロボット 社会の危機を救う! ってな感じでしょうか。私は人情味あふれる詐欺師が大好きで 思考するロボットも大好きで(ただしこれはちょっと守備範囲外)仲間が増えていく 連帯感の盛り上がりが大好きなので、満足。筋が安易だろうとエンタメ度は高いぞ。 ザンベンドルフチームの阿吽の呼吸の情報収集に混ざりたい……(03/18) |
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「奇跡は、それを信じる心の中にのみ存在するのだ」 |
『切り裂き街のジャック』 | 菊地秀行 | ハヤカワ文庫JA |
青い……青いわ。何が青いって万事理屈クサいところがだ。最後何だか尻切れトンボ なのは今に始まったことじゃないとよくわかる(笑)。でもこの19世紀末ロンドン を忠実に再現させてしまう、っていうのはいかにもキクチワールド。アクション付の 観光案内を楽しむってとこかな。余談ですが、これを実家で読んでたら「珍しい本を 読んでるね」と母親に言われた。どこが……?(03/21) |
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「餓鬼じゃない。――子供だろう」 |
『造物主の選択』 | ジェイムズ・P・ホーガン | 創元SF文庫 |
ロボットの生態系を作るもととなった異星人たちが出てくる続編。しかも極悪。異星 社会の描写はちょっと飽きが来るけど、後半は面目躍如にザンベンドルフが大ペテン を仕掛けてくれます。小説って「おまえら推論機能ついてないのか」と言いたくなる ことが多いけど、チームの1を聞いて10を知り100を仕掛ける手際に惚れ惚れ。 勧善懲悪の清々しさはヒーロー物のようだ。(03/25) |
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「ぼくが心配するのは、自分でなんとか対処できることについてだけさ」 |
『じょうずなワニのつかまえ方』 | ダイヤグラムグループ | 扶桑社文庫 |
ノウハウ本。それもすばらしい。アナタは以下の知識を役立てる自信がありますか? 「ローマ法王に拝謁する方法」「イノシシの頭の料理法」「木の窓枠の塗り方」「海 上での当直時間の決め方」「クマにダンスを教えるには」「沼地の干拓法」「イギリ ス海軍の酒の飲み方」「コカトリスとバシリスクの見分け方」「フラミンゴの羽を紅 色に保つには」「ワニをつかまえる方法」(03/25) |
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(写植(?)係の苦労を汲み取ってあげてください……) |
『D―ダークロード』 | 菊地秀行 | ソノラマ文庫 |
何に感動したって、手に持ってるだけで動悸が激しくなり笑みがこぼれる自分の刷り こみに恐れ入ったよ。ってぐらい待望のDなわけです。相変わらずの色男っぷりで、 吸血鬼になりたいと願った最初の理由を思い出した――この人に、滅ぼされたい。D は、滅びを他者の生にする転換を担う感じがするから。でも自分はちゃんと生きてな い感じがまた滅亡願望を誘うのだ。天野さんのDがやはりキレイ……(03/26) |
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「彼らは彼らだけで生きていけるだろう」 |
『46番目の密室』 | 有栖川有栖 | 講談社文庫 |
なるほど。何故こんなにマニアうけしているのか謎だったけど長編を読んでみて少し 理解。捜査に協力する犯罪研究家とそれにひっついている作家というわりと古風な設 定でありながら、現代テイスト。いかにも相手の気性を心得ている会話、火村のこっ 恥ずかしい決め台詞。ホームズ・ワトソンのバランスがいいね。それにしても、推理 作家として綾辻行人とこの人はキャラかぶってるよなあ。(03/28) |
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「おまえは小説を書いてろ。間違っても消防士にはなるな」 |
『月光ゲーム』 | 有栖川有栖 | 創元推理文庫 |
実は『Yの悲劇』を憶えちゃいないので、副題が『Yの悲劇'88』であっても何がパロ ってあるのかダイイング・メッセージ以外わからん(涙)。私は結局、心のオアシス がないと、仲間崩壊型ストーリーは落ち着かないと痛感。江神&有栖では、火村&有 栖ほど(いまんとこ)絆がないので不安になるのだ。だから、平和にマニアックなし りとりとゲームしてるときがいちばん楽しかったです……。(03/29) |
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(他の大学の子に推理研という正体を知られて)ばれたか。 |
『ロシア紅茶の謎』 | 有栖川有栖 | 講談社ノベルス |
昔読んだとき、気障を通り越して真剣だったらイヤすぎと思った助教授の台詞回しにも 何か慣れてちょっと病みつき(笑)。短編ミステリをあまり読まないから偉そうなこと は言えないけど、島田荘司が金田一少年なら有栖川はコナン。前者はトリックと謎解き が大仰で、後者はキャラクターの方にまいってる人間が多いとことか。プロットもマン ガチックだがまあいいや。↓このシリーズは火村激ハズ名言を書こう。(03/30) |
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「私は忘れないよ。君が命を賭けた最後のキスを」 |
『ダリの繭』 | 有栖川有栖 | 角川文庫 |
ああ!ナルホド完全に納得。これは据え膳(笑)。でもちょっと気の毒。女同士なら普 通にやるもんね、誕生祝いとか。小道具のフローティングカプセル、1年に1度しか溶 液換えないって……浄化装置がついてても私はイヤだ。しかもダリっぽいオヤジと同じ 溶液を使ってホントに心身安らぐだろうか。それを皆口々に試したいというのが、事件 の真相や不思議な友情より一番気になったことでした。(03/31) |
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「ヘイホー。」 |