2月の読書日記

mteraが2月に読んだ本。

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『匣の中の失楽』 竹本健治 講談社ノベルス
『虚無への供物』に印象がそっくり。しかもこれはフィクションの中でメタフィクシ
ョンを模倣している私の苦手な形だ。どれが現実なの?とか、衒学趣味といえば聞こ
えはいいけど、登場人物の底のない会話は何?とかおそらく考えてはいけないのだろ
う、というあたりが苦手。すべてのフィクションは机上の空論なんだろうから、突き
詰めるとこういう形になってもおかしくはないけど……。(02/07)
俺たちは、密室の中を生きてきたんだ。

『中国医学はいかにつくられたか』 山田慶兒 岩波新書
漢方よりも針治療が主。起源を探って少ない文書から推論を押し進める前半は理解し
やすいけど、後半はあやふやな知識では難しくなってきます。ここでも中国人の好き
な体系化が。いかに効いているか、とか発展に対しての科学的考察の話はなく、歴史
も唐代で終わっているので、現在の針診療に対していくらか知識のある人が読んだ方
が現状と対比できておもしろいかも。(02/10)
技術の経験起源説は近代人が生み出した神話、あえていえば平等主義の神話である。

『金閣寺』 三島由紀夫 新潮文庫
言葉の無力を三島は感じたのではないだろうか? 実際に金閣寺を焼いた男がいる、
その事実以上にこの小説に力をもたらす修飾はない。戦乱でなく個人の意志で、文化
遺産が失われることに慄然とする、その効果を狙って火をつける主人公を書いたから
には、行動せざるを得なかったからああいう最期なのか。そこで、建てたのも個人の
意志だという方に傾けば建設的だろうに、私は彼同様に火に傾く。(02/18)
人間のようにモータルなものは根絶することができないのだ。

『グランドホテル<異形コレクション9>』 井上雅彦監修 廣済堂文庫
趣向が変わって同じホテル、同じ夜を舞台にした競作。今回の売りになっている京極
はどうもくどい。この話なら一瞬のインパクトで終わらせた方がいいんじゃないか。
今回「ほう」と思ったのが竹河聖で、出来不出来はともかく彼女の匂いのしない作品
だった、つってもFT以外読んだことないから私の判断もアヤしいけどさ。それにし
ても、VDの設定なのに幸せなカップルのいないことよ(^_^;(02/26)
資料手元になし〜

『ゴーラの僭王<グイン・サーガ64>』 栗本薫 ハヤカワ文庫JA
早すぎるだろう……作者の傾向から言って仕方ないんだけど、重みが足りない感じ。
このまま、ナリスが死のうがイシュトが堕ちようが当然という気分を抱えて進むのは
寂しいなあ。若さじゃなくて時間をかけなくちゃ作れないものが壊されていく感覚が
もっとほしいと思うのは私の年のせいか? 真ん中あたりのイシュトの物思いはなか
なかいろんな意味で痛いものがあるけどな。(2/28)
わかったつもりで、何も考えていなかった。


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