12月の読書日記

mteraが12月に読んだ本。

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『陋巷に在り9』 酒見賢一 新潮社
やっと治ったと思ったら出番がなくなったよ、[女予]。いよいよ第2部かなっ……
って、気が遠くなっちゃいます。顔回は夭折していますが、この話ではまだまだ先に
なりそうなペース。ちょっとじれったくなってきました。子蓉ばっかりじゃつまらん
わ。権謀術数をめぐらすオヤジたちの話になってからの方がよほど動きがあって面白
いです。ってすっかり孔子が悪役なんですけど。(12/07)

『個人識別』 匂坂馨 中公新書
論文の要約のようにわかりにくい。前書きとあとがきでいいわけしてはいるけど、も
う少し専門的なくだりを噛み砕いて説明できないものかな。そもそも縦書きであるこ
とが鬱陶しくなるような文章は読みやすいわけがないのです。だからといって、例示
の事件の甲乙丙もまた読みにくいのですが。親子である確率、親子でない確率などお
もしろい話題もあるのに、このとっつきにくさは残念。(12/10)

『大魔術師も楽じゃない!』 ロバート・アスプリン ハヤカワ文庫FT
表紙と帯のアオリをJAROに訴えてもいいですか(笑)。今まで敵キャラはある程度お
約束の型にはまっていたので、吸血鬼と聞いてしかも水玉さん好きそうな絵をあてて
るから期待したのに。思うつぼでも、血を狙われて困っちんぐなスキーヴくんとか見
たかったっす(^_^;。それにしても、このシリーズはコミックスのノベライズみたい
だ。頭の中で再翻訳して読むが吉。(12/11)

『ブギーポップ・イン・ザ・ミラー「パンドラ」』 上遠野浩平 電撃文庫
だんだん容赦なく無機質に仲間が死ぬようになったと思うのは私の気のせい? 加え
てブギーポップの出番はムチャ少ない。でも、私が共感を持ったのは、馬鹿正直な程
本音の「ホントは6人で一緒にいるのが楽しかっただけ」っていうくだり。読む側の
態度にまんま通じると思うのです。すべての動機は単純に始まってることが自覚でき
たら、不幸も少ないのにね。(12/12)

『月の物語<異形コレクションVIII>』 井上雅彦監修 廣済堂文庫
これはもう『シズカの海』に限る! アポロ11号の如く私たちがかつて興奮したウ
ソ、身近なSFがそこにある。憧れの女の子という記号にすぎなかった少女の顔が見
えてくる。少しやるせない日常が私たちの子供時代と重なる。そして「だからこそ」
夢を見ることに素直だった思い出まで重ねてしまう仕掛け! 都市伝説のパスティー
シュにもなっているところがご立派。ぜひ読んでみて。(12/18)

『サンタクロースの大旅行』 葛野浩昭 岩波新書
巷にアルバイトの兄ちゃんが溢れるこの時期に読まなくちゃと思って読んだ。サンタ
クロース以前のなまはげのような<鬼神>のお祭りが、あたたかいホームを演じ作る
ための家族の通過儀礼、そして恋人たちの通過儀礼となった変遷が消毒された現代を
いかにも表していて大変おもしろい。政治的戦略から見たサンタクロースという事業
も知的興奮をそそる。最後にちょっとムーミンも顔を出してた。(12/21)

『スバル星人』 大原まり子 プランニングハウス・ファンタジーの森
「ミャコは、スバル星人に、恋をした」突然のたった一文が妙に説得力を持つ大原調
がとても調子よい復刻本。オムライスを食べることさえも「えすえふである」と「オ
ムライスを食べるだけ」で表現しちゃう。広之君はうううなものの、基本的にハチャ
メチャなので理詰めじゃないことに抵抗のない人向け。80年代の大原さんはとても
力強い世界だった、と今振り返って少し寂しいけど。(12/24)

『この貧しき地上に』 篠田真由美 講談社X文庫ホワイトハート
キリスト教クサいタイトルとWHの名に油断して中身も見ずに買ったら! 久々に、
電車で読むのが恥ずかしい(でも読んだ)本だった。この人は死体破損とカニバリズ
ム好きで十分ヤバいんだから、何もこんなベタな展開のポルノまで。作者談「恋愛小
説」だけど、それは我田引水だ(笑)。しかしこのキャラでは蒼/京介×深雪にしか
思えないんで(^_^;免疫のない建築探偵ファンは立入禁止。(12/28)

こんな本で一年を締めくくるのはたいへんイヤだが(笑)、とりあえずの今年の総括。

 今年エムテラは全部で136冊本を読みました(雑誌、マンガ、技術本を含まず)。1年の始まりは『姑獲鳥の夏』読み返し、1年の終わりはたぶんもう1冊読むので『陀吉尼の紡ぐ糸』という1年中そんな本ばかり読んでたんかい、とツッコみたくなるタイトルが並ぶのだけどその通りなので弁解できません。御手洗から清涼院までけっこうちょこちょこ読んだのですがマイベストミステリは『原罪の庭』。血まみれの子供、という私の弱点をつかれました。でも、ミステリマニアには無視されがちですね。マイベストSFは<異形コレクション>中の私の気に入った作品群。これジャンル的にはホラーなんだろうけど、私が好きだと思ったのはSF、FTの傾向が強いのばかりなのです。ノンフィクションベストは『死体は語る』または『ホームズとワトソン』かな。ノンフィクションははずれはとんでもなくはずれるけど、それ以外は楽しく読むのでわりと甲乙つけがたいのです。

 来年は「世界名作劇場シリーズ」関係、「水滸伝」(岩波が完結したら)、外国ミステリ古い系、あたりを読もうかと計画しています。継続作家はもちろん読むけど、大原さんの角川復刻が続かないかと期待。ノンフィクションはその場で目に付いた新書を買うので予告できませんが、噂の1999年もくることだしサブカル系に走りやすいかも。目標150冊ですが、ほとんど買って読むので置き場所の方が大問題となるのは間違いありません(爆)。

 私以外このページは読んでいないだろうと思っていたらタイトル一覧だけは見てる人もいるようですので、ありがたーく思っています。こんなところに書くのは危険ですが来年の抱負は「仕事より本」(笑)でいきたいと思っています。今年おつきあいいただいた方、来年もどうかよろしく。


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