『死者の代弁者』 | オースン・スコット・カード | ハヤカワSF文庫 |
エンダーの続編。キャラ的には前作の方が好きだけど、話的には断然こちら。賢者の 如き<代弁者>になったエンダーが、第二の異種族ピギーを滅びから助けられるのか。 ピギーの生が悲しいと泣かないエンダーに共感する。人間のようだから幸せなわけじ ゃない。人間のようでないから幸せなわけでもない。示唆に満ち満ちているけど、謎 ときつきSFとしても十分以上におもしろいです。(07/06) |
『精神鑑定の事件史』 | 中谷陽二 | 中公新書 |
どうしても、読後感として「ホントに病んでる人は半分以下か」と思ってしまう。犯 罪者のレッテルは社会から排除されるしるし、精神異常のレッテルは人間から排除さ れるしるし。(発言の動機が何であれ)レッテルを貼られた側からの「釈明する権利 を剥奪するな」という言葉は厳しい。症例の多くの狂気は、盛んな表現欲に支えられ ている。それは自分の属性でもある。でも私は狂ってない。何か悔しい。(07/07) |
『ドキュメント 屠場』 | 鎌田慧 | 岩波新書 |
差別の問題もわかる。普段隠されている(そこが問題なんだけど)空間だから、素材 としては神様の話題にも似てとてもそそるところがある。だがしかし! 私はこの手 の文章が苦手だ! 話し言葉を丸々写して「職工としての誇り」を5回も6回も繰り 返されるのと、自分なりにまとめた文で「誇り」を一度嘔い上げるのと、どちらが読 みやすく内容が充実しているか、作者と私の意見には隔たりありすぎ。(07/09) |
『赤い激流<グイン・サーガ61>』 | 栗本薫 | ハヤカワ文庫JA |
ゴーラの変、少しパロ有の本編。戦乱の話は好きだけど、情報戦に移行しているとこ ろが近代めいていて違和感。英雄譚は嫌いなんだけど、何ていうか、「ちょっとだけ 進んだ」っていう感じがしないのだ。原始時代に鉄砲持った軍隊が紛れ込んだように、 彼我の差が不自然。その概念を持ち込んだのが不自然なグインだからいいのかな。ナ リス様、貴方の呪縛は私も知っている気がします。(07/12) |
『夜来たる[長編版]』 | I.アシモフ&R.シルヴァーバーグ | 創元SF文庫 |
太陽が6つある星に2000年ぶりに夜が訪れる話。短編の方読んでません。私も「酸素 も水もないから生物はいない」という論法はとっても疑問なので、こういう想像はと ても楽しい。ただ、登場人物に「太陽が1つしかない星」の話をされると、自分の思 考が地球人に戻ってしまうのが難。それでも日食が起きて<星>の満ちる夜空は衝撃 に思えた。後半部、夜が明けてからの展開はイマイチ不自然。(07/17) |
『暗闇の囁き』 | 綾辻行人 | 講談社文庫 |
カタンドール(表紙の人形。すごく好き)につられた。ラストなんかは(ひびわれて ……)ぴったりだった。装幀の人素晴らしいですね。私は綾辻さんの本を『緋色』と これ2冊しか読んだことないんだけど、文章が柔らかく優しい感じがする。有り体に いえば怖くない。相性なのか、囁きシリーズだけなのか。記憶の欠落も、別世界の描 写の延長だから、あくまで他人事になっちゃう。ハマれなかった。(07/22) |
『退魔針<魔虫篇>』 | 菊地秀行 | スコラノベルス |
同じくスコラから出ているコミックスの原作。漫画、個人的に大成功だと思ってる。 すごく好みで楽しいのだ。だから、終わり2章ほど先行しちゃってるのは、ミステリ で犯人ばらされた気分。妖たちをつけてた子どもは何と……! とか、来須くん危機 一髪! とか、知りたくない人は読まないように。真紀がカッコいいんですが、原作 の方はさらに寒そうな格好であったよ。違いを探すのはヲタクの道楽。(07/26) |
『心はどこにあるのか』 | ダニエル・デネット | 草思社サイエンス・マスターズ |
この問いを発する人の答はいつも同じ。「人間にある。他にはない」。言葉が知性に 対して重要な役割を担っていることに異論はないけど、言葉という表象を内面の反映 とする論調は私には抵抗がある。「我思う」が思考の証拠となるのはあくまでも自分 だけでは。チューリングテストを通るロボットや犬猫に心がないと考えるのは、彼ら に心がない証拠にならない。私の心の証拠でしかないと思うんだけど。(07/27) |
『炎の記憶』 | 田中芳樹 | 東京書籍 |
久々に芳樹さんを読んだ。全部買っているんだけど。良くも悪くも芳樹さんの作品は 政治批判する巻き込まれ型主人公キャラ、階級意識の強い敵キャラで出来上がってい る。それはもう最初からと判ります。そして改めて銀英伝のデキのよさを思い知る。 しかし、芳樹さんはこの手の出版し直しが多すぎる。私も私で元の3冊持ってるのに 買うし。しかしなぜ東京書籍。版権どうなってるんだーっ!(07/29) |