2003年2月の読書日記

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『QED―竹取伝説』
高田崇史
講談社ノベルス
840円
この話は要するに人間は神様じゃないということではないだろうか。作中に出てくるように、自分が生きてるときに出来なかったことを現世の人間に叶えてくれるようになるのが神様ということならば、同時に進む背景の事件はその反証ではないだろうか。相変わらず我田引水牽強付会気味の崇の説だが面白く読めます。いっそ奈々の相槌はない方がいいんだが……なんか『美味しんぼ』を見ているようだというのはいいすぎ? テーマは散逸してしまっている感があるが、なんとなし楽しみに読んでしまうシリーズです。
(02/03)
『ホロー荘の殺人』
アガサ・クリスティ/中村能三訳
ハヤカワHM文庫
680円
解説を後から読んだが、うん、まさに「文学性の高い作品」だった。犯人あてについてはあまり考えず、登場人物達の関係がどう変化するかの方を見守ってしまった。特に、ミッジが爆発する場面では、現代で働く人間の気持ちを代弁しているように思います。その爆発した内容が、ミッジの力で解決されなかった、私たちではどうしようも解決できない方法で解決されてしまったので、ちょっと消化不良が残るが、その役割をある意味では後半ヘンリエッタと交替したのかもしれない。ただ、文章は突然語り手が変わるのでものすごく混乱します。後期とは思えないぎこちなさだ。
(02/07)
『ST 青の調査ファイル』
今野敏
講談社ノベルス
760円
戦隊物のような派手さを潜在させながら、地味な本格のように端正な謎解きをする作品だ。特に、前作までみたいな重複する紹介場面とかがなくなったので、地味さの方が主になったように感じられる。文章が下手なのが気になるが、こういう謎解きは好きだ。人間ドラマはイマイチ成功していないように思える。個人的には「ドッペルゲンガーを見るとその人はもうすぐ死ぬ」という言い伝え(?)に科学的な一説を教えてくれたのが重宝。
(02/08)
『陽気なギャングが地球を回す』
伊坂幸太郎
祥伝社ノンノベル
838円
うーん、失敗かなー。捻りも何もないよーなー。スケッチとして見るのならかまわないんだが、物語っていうのはゆるみどころと引き締めどころがいると思う。ずーっとぼんやりしている印象。これだけ多様な能力を持つキャラクターを出しながら、活かしきれていない。書き分けができていないように思う。部分部分の会話とかはまあいい調子かなと思ったりするんだが……むしろ映画にすべきなんじゃないか。時折入るおまえは田中芳樹かと言いたくなるような批判がちょっと作風に合ってない。
(02/17)
『ヴァンパイア・レスタト・上/下』
アン・ライス/柿沼瑛子訳
扶桑社ミステリー
660円/660円(もらいもの)
読んでる間中、おそろしいことにレスタトがトム・クルーズで、ガブリエルがなぜかキャメロン・ディアスで想像されてました。超ひっさびさに耽美小説に分類されるものを読んだ。そういえばこういうふうに観念的な文章が半分を占めるようなんが耽美に入るんだったっけなー……。ちょっと栗本薫を思い出しちゃったわ。最初発行されたとき梗概を聞いて「吸血鬼がロックスターとはアメリカ人はどういう感覚をしているんだ!」と憤慨したものですが、これ吸血鬼小説ではないですね。時代を切り拓く若者を描いた小説。老害はびこる旧時代の吸血鬼制力に対し、「好きなように生きよう」と呼びかけ、そして今がいちばん美しく力強い時代だといつも感動に溢れているのが、レスタトでした。不死身のヴァンパイアに若者の概念を体現させるという視点は面白い……が装飾過多だがわりとプロットが一本調子なのが残念だ。
(02/25)
『十字架クロスワードの殺人』
柄刀一
祥伝社ノンノベル
895円
短編の方がよかったかな。この作者の長編は登場人物の気持ちを表現するのに無駄に「……」が多いと思うので、その文体をそぎ落とさなくてはならない短編の方が読みやすい。今回も科学知識が豊富にちりばめられているが、謎解きの方には関係していないのが惜しい。特にどんでん返しがあるというものでもなかったし。堅実ではある。そしてこの後の展開はより真面目に堅実に、そして穏やかな未来の夢という絵を描いていきそうなところはシリーズとしてあたたかみがあるので期待。
(02/26)
『エッジウェア卿の死』
アガサ・クリスティ/福島正実訳
ハヤカワHM文庫
640円
私はポアロは単独で動いてる話の方が好きだ。ヘイスティングスの視点はワトソン以上に間抜けでいただけない。何よりポアロは大人なので誰かと始終連れ添っている性格という感じではないのだ。で、ヘイスティングスの視点だからか(というか書いた時期なんだろうけど)、ポアロの喜怒哀楽が激しいです。へ(略)は動かないと批判しているが、実際は奔りまくるポアロという印象だ。この仕掛けは結構反則すれすれではあるが、反感は抱かない。クリスティにありがちなポジションの犯人だが、性格設定はユニークだ。最後の手記が妙に歪んでて、クリスティっぽくないおもしろさも味わえます。
(02/28)

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