2002年10月の読書日記
『キネマ・キネマ』
井上雅彦編
光文社文庫
876円
よく考えると、13『俳優』とテーマがかぶっています。ネタ切れ? もっとホラーと関係なさそうなテーマでも面白いと思うんだけどなあ。『音楽会』とか『家族団欒』とか『クルマ』とか、あ、海に対して『山』ってやってないじゃん〜。ってこう書いていくと何でもホラー的に見える罠。半分ぐらいは面白かったが、強烈!という個性はなくなっている感じ。駄作は多くても1点心底心冷える話が読みたいなあ。誰にでもウケるスタイリッシュな作品が増えちゃって何とも。文句もつけにくいが、推しにくくもある。60点。ホントに編集変わったのかしら〜。
(10/03)
『ひらいたトランプ』
アガサ・クリスティ/加島祥造訳
ハヤカワHM文庫
520円(古100円)
過去読んでるのですが、犯人すっかり忘れていたよ! ブリッジの展開から犯人の心理を読むという推理の過程が地味なせいか、キャラクターが派手です。登場人物達が、現代劇に登場させても全然おかしくない活発さに溢れている。推理自体も実際は派手だ。細かい点数表を出しておきながら、ブリッジの知識はたとえば「麻雀ではリーチして上がって、なんだかんだ揃ってると点数が高い」ぐらいの知識があれば結論に辿り着けるところもいい。ポアロの考え方が今までと違っていて、とても好きな考え方。犯人は忘れていてもどんな話かは覚えていた、印象強い名作と思います。
(10/09)
『愛国殺人』
アガサ・クリスティ/加島祥造訳
ハヤカワHM文庫
640円
持っていたが読まずにいた本だと思う。ポアロかっこいい! 思わず拍手を送ってしまいました。どんなとこがかっこよかったか書くとネタバレになるので書けません。クリスティは仕掛け癖があって読み慣れると「犯人らしい位置の人」というのがすぐわかるんですが、それでも、推理の過程というより、捜査の過程が面白いです。新本格ではよく皆が都合のいいことを喋るが、クリスティの場合、全然そんなことはなく人物達が生きている故の扱いにくさを持っている、という感じが面白い。今回はさらにドラマチックでもありました。どんどんテレビ版が見たくなってきてます。発想の転換という点ではジョージの一言が楽しい。
(10/17)
『ヘラクレスの冒険』
アガサ・クリスティ/高橋豊訳
ハヤカワHM文庫
800円
短編集。うまいね、さすがに。ヘラクレスの難業12に題材を取っているわけですが、そのアレンジの仕方がうまい。伝説がライオンだからといってライオンを持ってくるわけではなく、ひねくり方に妙味がある。殺人事件が少ないため、ポアロの考え方とかちょっと老人じみた頑なさとかを大きく表現する余裕があり、人間くさくて楽しいです。だんだん脇役レギュラーも顔なじみになってきました。
(10/22)
『ABC殺人事件』
アガサ・クリスティ/田村隆一訳
ハヤカワHM文庫
640円
コナンが大顰蹙のネタバレをやったので、次の巻が出る前に読んでしまわなーと。もちろんメインプロットは知ってたんですが、誰が犯人かまでは忘れていたので。この話はポアロにしては珍しく動きが多く、さらに警察小説っぽさもあり、探偵に反感を抱く捜査官というのも出てきて、いろいろと原点的だ。考えてみると、クリスティは、現在のミステリの公式を沢山編み出した人なんだな。可愛らしいお遊びも混ざっていて、普段の端正な筆ではなく勢いのある筆だ。初期の作品らしいおもしろさ。
(10/27)
『魔人同盟』
菊地秀行
祥伝社ノベルス
819円
朽葉さんが20代前半で屍の一つ後輩……!? 10年ぐらい前の話だから本編でも30代前半〜半ばということになる。むっちゃ驚いたわ! 魔界都市の昔話なわけですが、何かすごく皆さん青臭くて、物語に動きが多いですな。というかこれ完全にジュブナイル。こうなるとエロシーンがある必然性が出てきたね、でなくては祥伝社で出す意味がない。定番中の定番、幼なじみ三角関係ネタが展開していて――正直な感想を述べていいか、アクションとか主筋以外の人間関係が、同人誌かー!?という展開なんです。コメントに困ります。
(10/29)