2002年8月の読書日記

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『慟哭』
貫井徳郎
創元推理文庫
720円
えっ……。ちょっと待って。どこで驚けばいいんですか? なんかわりと評価高かったような記憶があるんだが、勘違いか? 「まさかそんな単純なわけないよな〜」と思いながら読んでいた構成そのままなんですけど。それに、私は犠牲者の死を無駄にするような、教訓を得ない話が大嫌いなのです。前向きに生きて欲しい。それを抜かしても心理描写の方はイマイチぶつ切りな感じがするんで、これで評価高いとは思えないんですけど。無理があるというか。うーん?? 頭の中がヘンな形の?だらけです。
(07/04)
『人形幻戯』
西澤保彦
講談社ノベルス
880円
相変わらず、「本人が聞いたら名誉毀損で訴えたくならないだろうか」というような想像力を駆使して動機を推測しています。この特殊な動機がヘンな状況を解明するというプロセスなので、そこが持ち味なんだが、犯人自身の独白形式ではない場合、「下世話な……」と思うこともあるので、注意が必要。でも思考の発想はおもしろいしなー。
(08/11)
『花火百華』
小野里公成
丸善ライブラリー
980円
花火の豆知識集。さすがHP運営しているだけあって、情報は最新、花火を見るにあたってWebや携帯を駆使したオススメ方法を紹介してます。花火の上げ方とか、微妙に知っているような知っていないようなということを、きちんと教えてくれる。そして何より、花火を好きな情熱が伝わってきます。でも写真は、正直、あんなに流れていると花火に見えない気持ちー。
(08/13)
『妻の帝国』
佐藤哲也
早川書房
1700円
あとがきで佐藤亜紀の旦那だと知った。さもありなん、な文章です。亜紀氏はバルタザールしか読んでないけど、いかにも納得できる。夫婦でファンタジーノベル大賞(佳作)か。景気いいな。民衆感覚という幻想は、誰もが抱きそうだが絶対に実現できない、それでいて、実現する瞬間を誰もが感じたことがありそうな。最後、不由子は「わたし」がどうしてそこにいると知っていたんだろう、と考えるとき、それは自ずとわかっていたことなのか?というあたりが最もSFか。ある意味他愛のない、ただの淡泊な世紀末小説という気もするし、もう少し妻との関係に変化がある方が面白いだろうなと思うけど、まあわりと好きかも。
(08/16)
『風の向くまま』
ジル・チャーチル/戸田早紀訳
創元推理文庫
740円
コージーミステリになるのだろう。恐慌で文無しになった兄妹が遺産を相続し、ってこの兄妹がお約束だけどいいわ。美形で軽薄能天気がポーズらしい兄としっかり者で聡明な妹。阿吽の呼吸は安心して見ていられます。んでもって、料理が素晴らしくうまそう……! 視点の移動が起こるというミステリとしては大分ぞんざいな気もするが、それはおまけしてあげる。ご近所さんとの建前ありの会話を楽しむべし。
(08/23)
『鷹は昼狩りをしない』
スコット・オデール/犬飼和雄訳
ぬぷん児童図書出版
1400円(古100円)
なぜかBOOKOFFの100円コーナーでよく見かける児童書。ルターの時代に聖書を英訳した人の伝記を、関わった船乗りの少年の視点から描くことで冒険小説風味を添えている、という感じ。構成とかよくできているとは思うんだけど、イマイチ乗り切れないなあ。訳が淡泊すぎるせいかなあ。映像向きかも。少年は、結末から見ると、とてもラッキーだったのではなかろうか。異端審問官みたいのに捕まるかもとどきどきしつつも、得た物の方が多い。全然関係ないが、出版社の名前がとても気になる……。
(08/24)
『山伏地蔵坊の放浪』
有栖川有栖
創元推理文庫
640円
地蔵坊が江神さんらしいという話があったので、買った。特徴を読んでも全然わからない、そんなマニアックに攻めてるのか〜、と思っていたら、そう推測させるくだりはラストになって初めて出てきた。マニアじゃなくても読んでればいいだけか。しかも彼であるという確証はないよな。他にも該当者いるわけだしな。有栖川さんの短編は、ほんの小さい発想をいじくり回す感じなので、こういう嘘かホントかわからない語りのみの事件というのは、向いてるかもしれない。
(08/25)
『呂后』
塚本青史
講談社文庫
667円
ちょっと辛かったわ……。政策の決定やらが閨房に依存しまくり。そういう話は私の好みではないのです。いやしくも中国物なら諫言とか暗喩とかたちうちできないような頭脳勝負できてほしいわけです。でも、とっても中国物らしい物語を書く人だと思う。漢文のような。悪く言うと短いエピソードを連ねている感じでぶつ切り、盛り上がりに欠ける。400円文庫のときは面白かったので、中短編向きかも。
(08/29)

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