読書日記(2001/08)


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『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
      J.K.ローリング/松岡佑子/1900円
ハリーの魔法学校2年目、学校の伝説が明らかになる。

希望を作るのがうまいと思う。あんなにイヤなおじさんたちでも、なんか憎めなくなってくるし。今回も仕掛け凝っている。まさかあの人が……!と思うような。先生たちが、子供たちのことをちゃんと心配しているのがわかって嬉しいです。そうそう、今回はギャグも満載。ロックハート先生、なんともいえません。ジンクスを裏切る2冊目。(08/03)


『ハリー・ポッターとアスガバンの囚人』
      J.K.ローリング/松岡佑子/1900円
アスガバンから脱獄した囚人は、ハリーを狙っているらしい!

そろそろ慣れてくるので、仕掛けの作り方なんかは推測がつくのですよ。それでも楽しかったなあ。ハリーの成長が窺えて、目頭が熱くなります。罪を憎むということと人を憎むということは違うんだって、学んだことでしょう。魔法の力もだんだんついてきて、自分の力で、問題が解決できるようになってきてる。それでも、友達の力は偉大さを失わない。このバランスは得難いものだと思う。ああ、もう終わり。次の巻が待ち遠しい〜。(08/04)


『暗い宿』
      有栖川有栖/角川書店/1500円
宿をテーマにした火村&アリスの小品集。

本格、ではないと思う。謎を解くということが至上命題ではないし、謎そのものもあってないような話が半分。小説を書くという有栖川さんの姿勢に沿った作品ではないかと思うのだが。派手さはない。だから小品集。装幀がキレイだなあ。(08/07)


『毒笑小説』
      東野圭吾/集英社書店/600円
ブラックな笑いを収めた短編集。

東野圭吾のお笑いとは性が合う。くどい部分もあるが、大いに笑える。しかし、お気に入りは、『つぐない』。これはとても切ない作品。ぜひバッハのメヌエットを聴きながら読みたい作品。京極との対談というおまけがついていて、それがツッコミどころをあますところなく伝えております。(08/16)


『怪笑小説』
      東野圭吾/集英社書店/495円
ブラックな笑いを収めた短編集。

これまた切ない『あるジーサンに線香を』が好きです。『アルジャーノン』の本歌取りなのは言うまでもないですが、予想がついてもまた切ないです。ましてや、これは誰にでも訪れることだから。全体的に、一読後の笑いが過ぎると、切なくなるお話が多いです。それは作者の意図するところではないのかもしれないけれど。(08/17)


『ST 警視庁科学特捜班』
      今野敏/講談社ノベルス/760円
典型的な連続淫楽殺人に対して、矛盾を唱えたのは新規創設のSTだった。

全員の名前に色が付いている。性格分けも強烈である。マンガを意識しているというよりは、戦隊モノを意識しているのではないか。こんなに社会的でない連中が警察組織にいられるんだったら、私でも警察に入れたかもと思ってしまいました。謎解きは、普通、かなあ。この語り口だと犯人はおのずとわかってしまうからな。ちょっと文章的に苦手なところもあります。(08/20)


『超・殺人事件』
      東野圭吾/新潮エンターテインメント倶楽部/1400円
推理作家が税金対策にひねり出した小説とは? など笑いのミステリ短編集。

バカミス。『超長編小説殺人事件』など最近の長編傾向を皮肉っていて自嘲気味に笑えます。それでいて超でぶい小説を出す京極と仲良く対談していたりするんだから侮れない。京極も笑うに違いないが。税金対策のバカさ加減も好きだ。先だって読んだ『毒』『怪』よりミステリ度・お笑い度が高いと思います。その分、せつなさは少ない。(08/21)


『星を拾う男たち』
      天藤真/創元推理文庫/820円
死体が落ちてきた、さてどうしようー表題作他短編集。

表題作のオチが予測つけられなかったのが悔しいです、マジで。天藤真の作品はちっとも古くないので、安心して読める。とても60年代の作品とは思えない。わりと、単純な『共謀者』あたりが好きです。(08/21)


『三四郎』
      夏目漱石/新潮文庫/?円
東京で三四郎の出会う人々。

なんで『三四郎』という題名なんだろう。『美禰子』ではないのだろうか。文学と云ふ事で見たときの印象とだいぶ違う。行動が予想がつかなくて、いかにも小悪魔な女っぷりである。『三四郎』の一人称なので、彼のよいところがわかりにくかった。優柔不断で曖昧に見える。わかりにくいから、美禰子がなおいっそう小悪魔に見えるのだった。(08/24)


『ナポレオン・ミステリー』
      倉田保雄/文春新書/680円
ナポレオンの毒殺だった?遺体は盗まれている?彼を包む多くの謎。

ナポレオンに関するいちばんのミステリーは、私にとっては、彼は毒殺されたかもということでも遺体がすり替えられているかもということでもなく、いったいどのへんが英雄なのか、ということだ。負け戦は知っているのだが、勝って政治的などんな功績をあげたかはよくわかっていない。戦のほとんどは他国への侵略である。どのへんが英雄と讃えて憚らない手腕なのかを知りたいものだ。(08/27)


『文書鑑定人 事件ファイル』
      吉田公一/新潮OH!文庫/676円
文書鑑定人の鑑定するモノは筆跡、文書、印章、偽札などなど。

またなりたかった職業が1つ増えてしまった。芸やまとまりはない。淡々と鑑定した事件の記憶を並べているだけ。それが職人ぽい。ここに注目すべきという点を系統立てて書いているわけじゃないのだが、あまりにも事例が豊富なので、読んでいるうちに弟子入りしたような気分になってくる。だからといってそう簡単になれるものではないのが、また魅力的。しかし昔の事例が多いので、最新技術を知る役には立ちません。(08/28)


『誘拐作戦』
      都筑道夫/創元推理文庫/500円
車の前に倒れていた女の死体を利用して誘拐作戦を成功させよ!

メインのトリックはおよそ予想がついたが、結末は予想がつかず。動機もちょろちょろしてたけど、はっきりとは考えなかったなあ。これは叙述の勝利だろう。叙述によって謎を増やしている。誘拐がテーマのわりに人がゴロゴロ死ぬのでびっくりしました。(08/30)


『流言とデマの社会学』
      廣井脩/文春新書/700円
流言とデマはどう違うのか?災害のとき流言に惑わされないためにはどうしたらいいのか?

思った以上に学術的でした。流言とデマの定義から始めている。デマよりは、どちらかというと流言の方がおそろしい。悪意がないと思っている集団の方がおそろしい。全然関係ないことですが、著者近影、蟹江けーぞーと甲本くんを足したみたいな顔してる。(08/30)


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