こんな上司がほしいです。カッコいい。中隊長がお金持ちなのは自身の才覚に寄るのであって、それがまったく納得できるいい管理職っぷり。自分に自信のなかった隊員たちが、いいところを見つけられて、誉められて、ってしていくうちに、能力を発揮して仲間意識も生まれてデキる集団になっていく。読んでて気持ちいい。(05/26)
上のように書くと、まるで主人公は大宮だ。大宮も大宮でそれは馴れ合いじゃないのかって思うが、失恋した主人公野島は、さらに友情のことなんか考えていないんじゃないかと思う。自分のことしか、いや、自分のことさえ見えていない愚者。不格好なプライドと、根拠のない自分への過大評価は醜いばかりだ。杉子の言動に一喜一憂するあたりは可愛らしいといえなくもないが、盲目すぎて私は嫌いだ。これが青春の群像とか一途でひたむきとかいわれても。失恋と裏切りの後、ホントに野島は改心するだろうか? 私は疑わしいと思うんだけど。(05/26)
表紙の絵と裏表紙や見返しの誘い文句につられて買ってしまった、分類:児童書。「そうだ、本気になれよ。本気で向かってこい。子どもだとか小学生だとか中学生だとか、関係ないこと全部すてて、おれの球だけ見ろよ。」――って、高村薫キャラばりの殺し文句を連発する中学生未満……。その色気はなんなのあんたたち……。読者ターゲットに狙われているような気がするのは俺だけだろうか。巧くんは気持ちの表現に不器用なところと、潔癖な感じと、弟・青波を大事に思う気持ちと疎ましく思う気持ちと曖昧な嫉妬が同居しているところが、いかにもこの歳らしい。豪ちゃんは人間できすぎでかえって心配なぐらいだ。(05/26)
NHKの番組の撮影のために行ったんだが、「フィクションが好きなんであってヴラドには興味ないね」といいきる率直さが好きだ。その一方でちゃんと誉めるべきところは誉める。過剰な美化もかたくなな失望とも無縁。ってひいき目が入ってるのかもしれないけどさ。なんかすごーく菊地さんにしか書けない旅行記になっている。(05/27)
隊員と中隊長の間のちょっとぎくしゃくな感じが今回の最大の敵か。過労死するぞ、おい。ってなぐらい、自分で裁定しないと気がすまない部分と、部下に任せておきたい部分と、どうもそのすみわけがちゃんといってなくて、フールの健康大ピンチ。理想の上司だが、自分はなりたくない上司でもある。血縁でもハラハラするに違いない。軍隊のはずなのに、全然血腥くないお仕事っぷりがいいです。はっきりいって、マフィアの女ボスは役者が足らないでしょう。(05/27)
てゆーと推理力も超人みたいになってるように思うでしょう? ところがそんな明るさは微塵もない。分裂気味で、いかにも「病気」なのだ。確かに彼の推理で事件は収束を迎えるのだが、実はそんなことよりも、兄と兄嫁と弟の関係が崖っぷちに向かっていくさまにハラハラする。結末はあまりにも哀しい。解説のはやみねかおるの「推理小説が好きな人って、みんな、内なるベーカー街に住んでるんでしょうね」って言葉が胸にしみる。(05/28)
前半と後半の接続部分が、続編を考えていなかったテレビシリーズが人気沸騰したんで無理矢理旧キャラを整理し新キャラを登場させたかのごとく、まるで始末がうまくいってないわ。新入隊員の猫型宇宙人は今までにないキャラだし、とぼけまくりのクァルはこの巻限りのゲストってのがもったいないぐらいだけど。遊園地惑星のいざこざは、せっかくフールが機関銃掃射した惑星だっていうのに、イマイチ焦点がぼけている。アスプリンはもっと起承転結のメリハリが効いた話の方がおもしろいと思うけど、ま、前巻から間が7年あるから、準備体操ってとこかな。(05/31)